ダイアナ・W・ジョーンズ

感想系
05 /13 2011
3/26に、76才で永眠された、ダイアナ・ウィン・ジョーンズ(DWJ)。
日本では『ハウルの動く城』の原作者として知られています。

こちらの作業が一段落して、本屋に並んでいた新刊文庫を買って、
うきうき読んでたら、最後の後書きに作者の訃報がありました。
予想外の衝撃を喰らって、思わず膝をつく私。
何事かと驚く同居人の太刀川さん。

自分としては、本当に久々に、”作家買い”して後悔のない
貴重なファンタジー作家だったのに・・・!!
私はDWJを大人になってから知ったので、影響は少ないのですが、
純粋に読者として、翻訳が出るのを楽しみにしておりました・・・。


以下は、しみじみとDWJ作品を個人的趣味で語ってみるの巻。


☆大前提として、私のファンタジー趣味はトールキンと佐藤さとる先生。
 エンデと宮澤賢治。マキリップとマガウォイとDWJあたりです。


ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品は、児童文学に分類されるものが
多いのですが、骨太の本格ファンタジーもしっかりあります。
しかし、多くの作品に共通して”多重世界”を行き来する”大魔法使い”
というモチーフが登場し、そのほとんどが主役級の扱いとなっています。

『ハウルの動く城』のハウルも、その典型的な大魔法使い。
アニメでは描写がありませんが、ハウルは魔法のない世界(つまり、ここ)
生まれの人間だったことが、原作を読むと判明します。

ハウル的な、おしゃれでちょっとヘタレな魔法使いが好きな人には、
『大魔法使いクレストマンシー』シリーズがオススメです。
クレストマンシーとは役職名で、多重世界を股に掛けて活躍する
時空管理官的な大魔法使いに与えられるもの。
この設定だけで、好きな人は好きだろう。そして、実際に本を読んで
予想外のミステリーっぽい展開に驚いてハマることうけあい。


ミステリー。
DWJの作品に必ずある要素。端的に言えば”犯人さがし”であり、
一見無関係に思えるキャラクターを群像劇のように並び立て、
物語後半でぐっとまとめて一気に謎が解ける爽快感はクセになります。


そして、毒。
DWJの描く悪役は、本当に憎ったらしい。というか。
主人公の身内が、悪魔のように恐ろしい場合が多々あります。

己の欲望のために、実の子を生け贄にする母や姉をさらっと描く
作者も怖い(残酷な描写はないので、ぎりぎり児童書でもOK)。
主人公(少年少女)が、身内の敵を見放して大人になる瞬間が、
もっと怖い・・・(と、私は思う)。

ついでに言うと、登場人物の多くを最初マイナスイメージで描き、
だんだん印象が変わっていくのもDWJの持ち味。
最終的にヒロインやヒーローに成り上がる者もいれば、
残酷な悪魔と化す者もいるので気が抜けません。


『ハウル』と『クレストマンシー』は、児童文学寄りで、
毒は少ないですが、そこからちょっと大人向けに書かれた、
新刊の『バビロンまでは何マイル(上下巻)』があります。
多重世界のあちらとこちらで、同時に事件が起こって大騒ぎ!
似た雰囲気のSF寄り大人向け作品が『魔法泥棒』。

多層プロットで一気にオチを付ける系の楽しく読める秀作が
『七人の魔法使い』や『ダームホルムの闇の君』です。

新刊の『バビロンまでは~』が、自分の中でかなり印象的だった
『花の魔法、白のドラゴン』と同じ世界だというので、
読み返したくなりました。↑これは、ハーブの香りが体の芯まで
魔法で染みこんでくるような。そんな上質の物語でした。


個人的なお気に入りは『デイルマーク王国史四部作』です。
旅芸人の賑やかな一家や、テロリストとして育てられる少年の物語を
丁寧に描きながら、運命の糸を織り上げて壮大な神話にしてしまう。
骨太のハイファンタジー。トールキンとマキリップが好きなら
読まないと損!! エンデ好きもいけると思います!



・・・・・・・・と、熱く長く語ったところで、改めて寂しくなりました。
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ先生のご冥福をお祈りいたします。
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SERA WORKS

 原作:千堂 櫂
  (せんどう かい)

 作画:太刀川 京
  (たちかわ みやこ)