マンガの描き方1:お話

マンガ道
06 /01 2010
ふと、雑談の際にマンガについて語ることがあると。
ついつい熱くマニアックになってしまうことが多いです。
しかも、マンガを描く側のネタになると、思うところがありすぎて。
マンガに詳しくない人に説明するのは、至難の業になってしまう。

というわけで。自分の脳内を整理する為に、またマンガの描き方について
基本的なことを知りたい人のために文章にしてみます。
(!注意! これを読んでもマンガが描けるようにはなりません)



【大前提】
「物語」を一枚絵ではなく、「コマ割り」にして物語の流れと起承転結を
判りやすくメリハリをつけて表現したもの・・・・が、『マンガ』だと思います。

4コママンガや絵本的なマンガなど、この定義でないものは多いですが、
ここでは現在主流の『ストーリーマンガ』の描き方の流れにポイントを
絞って書きます。それでも、すごく長くなってしまいました;

*あくまで私(原作担当)個人の経験からとらえた”マンガ”の描き方ですので、
 全てのマンガ家がこの範疇に収まる描き方をしているわけではありません。
 「なんとなくマンガのできる流れが判るといいなぁ」という程度のものです。

★今回、パソコンでマンガを描く話には全く触れていません。ご了承下さい。




◆◆物語を考える過程(第一段階~第三段階)◆◆

【第一段階・・・発想・ネタ】

・「話を思いつく」もしくは「描きたいものを思い浮かべる」ことから始まります。
 主要キャラクターの初期イメージを落書きの形で描きまくります。
 人体部分に例えるなら・・・脳細胞。この段階の物語はあいまいな断片です。

・妄想・空想を楽しくどんどん膨らましてゆく時ですが、その途中でマメに
 ”こういうのって、他の人が描いてなかったっけ?”と、自分で検証するのも
 大事なことです。面白かったマンガや映画などの影響は受けてしまうものですが、
 既成のものと全く同じでは、新たに書き出す意味がないのです。
  


【第二段階・・・プロット】

・ぼんやり考えていた空想を、起承転結のあるストーリーにします。
 これは人体に例えるなら背骨みたいなもの。背骨がしっかりしていなかったり、
 歪んでいると作品全体の出来を左右します。
 プロットは、作者自身が物語の流れを把握するために書くメモ書き程度のもの。

・理想的なプロットにはきちんと「伏線」と「伏線の回収」が明記されている。
 ただの”あらすじ”ではないということを、自分も最近になって知りました…(←ダメダメ)。
 
・この段階で初めて他人に「こういう話を考えてるんだよ」と話すことができます。
 また、他人に話すことによって、同じような話が他にないか、構成がおかしくないか
 初期段階で検証できるという利点があります。



【第三段階・・・ネーム(絵コンテ)】

・マンガという表現方法の最も特殊かつ独特な部分です。人体なら骨格そのもの。
 頭の中にある物語を、マンガのページをめくる読者の視点を意識しながら
 紙の上にコマ割りとセリフを中心に展開してゆきます。
 
・特にページ数が決まっている場合には、ページ内でどのように起承転結を構成し、
 見せ場をどこに作るか等を検討するマンガの設計図として大活躍するものです。
 ネームに一番時間をかけるというマンガ家は多く、納得がいくまで何枚も描き直す
 ことがあります。物語としてのマンガは、ネームで完結してしまうのです。

・ネームの描き方は人それぞれです。コマ割りとセリフだけの人もいれば、
 下書きみたいに背景・人物の表情入りネームを描く人もいます。
 書く紙もそれぞれ。B5のルーズリーフ1枚を1ページ用に使う人もいれば、
 同じ紙に4ページ分の簡略ネームを細々描く人もいたり。
 (ネームを他人に読んでもらう場合は、ある程度丁寧に描いた方がいいです)

・プロマンガ家が編集さんと打ち合わせするのは、主にこのネームの段階です。
 細かい設定や物語の修正、ページ数の調整などもネームで行います。
 
*・・・・・・小説家の書いた完成原稿と、きちんと描かれたマンガのネームは、
 物語として、同じぐらいの段階(存在?)ではないのかと個人的に思っています。


 
そして話(ネーム)がまとまって、やっと絵を描く作業に入ります。
世の中には、第一段階から第三段階をすっ飛ばして、第四段階の下絵から
マンガを描く人もいますが、それは物凄い天才か単なる手抜きかのどちらかです。
プロでは鳥山明先生と一条ゆかり先生が、ネームを描かない書き方で有名です。

アマチュアや新人マンガ家(卵を含む)は、プロット→ネーム→下絵という手順で
数をこなしてからでないと、話をまとめることさえできないので注意しましょう。



「マンガの描き方2:作画」へつづく
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