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演劇悪魔のこと。  

新進気鋭の脚本家であり演出家である、谷賢一氏の舞台を観てきました。
別名、演劇悪魔(笑)。演劇を殺すほど愛している金髪の二十九才。
新作(翻訳と演出)『モリー・スウィニー』の感想は、追記にて。

(写真はシアタートラム前にある素敵なタイル。三軒茶屋駅前)
110611_1242~01

小劇場の演劇を観に行かない私が、なぜ彼を知ったかというと、
数年前ロシア(旧ソ連)関連の資料とチェルノブイリ関係を
調べていた時、検索で見つけて興味をひかれたから。

当時二十五歳の彼が書いた”チェルノブイリ後”の舞台脚本を読み、
綿密な下調べと鋭い問題意識が練り込まれた完成度に驚きました。
その上に散りばめられたポップな味わい。なんだかチャーミング。
谷賢一氏の主催劇団の名は、DULL-COLORED POP ですが、
なるほどなぁ、というネーミングです。

小劇場で驚異の動員数を誇るのも納得。ずっと気になっていました。
でも、なかなか都合が合わず、やっと生の舞台を観たのは去年。
老舗の小劇場タイニィ・アリスで『幸せの歌をうたう犬ども』でした。
作画さんを引き込んで、二人で「面白かったね!」と言いながら
興奮気味に新宿を歩いたのを覚えています。


・・・で。私達は、さりげに彼を応援しているスタンスなのですが。
谷賢一氏は、驚異の速さで演劇界を昇ってゆく。
平田オリザ先生の青年団演出部に、アトリエ春風舎の芸術監督に。

新作の『モリー・スウィニー』の主演女優は、南果歩さんですよ!
あと二人の主演男優も、TVに出ている役者さんたちで。
上演舞台は、おしゃれな世田谷パブリックシアター/シアタートラム。
~~あれあれ、演劇悪魔。なんかすごくないか? みたいな。

そんな彼が、今だからこそ再演する舞台が8月にあるそうです。
タイトルは『セシウムベリージャム』。
チェルノブイリに取材した問題作。今の日本ではタブーになりかねない。
・・・やはりこれは、観に行かねばならないだろう・・・。


以下は、『モリー・スウィーニー』の長い感想です。
公演は6/10~6/19で、ネタバレしまくっているので注意!


『モリー・スウィーニー』はアイルランドの国民的作家
 ブライアン・フリールの1994年の作品です。
 NY演劇批評家協会賞の最優秀海外戯曲賞を授賞したもの。
それを、谷賢一による翻訳・演出。
三人芝居形式で、約二時間二十分。

盲目の女性モリー・スウィーニーが、目の手術によって
40年ぶりに視力を取り戻す。その過程と経過の物語。

モリー・スウィーニー:南果歩
フランク(モリーの夫):小林顕作(NHK教育などに出ている)
ライス医師:相馬一之(JIN-仁-滝先生役など)



見えない世界を上手に生きる、感受性豊かで幸せなモリー。
彼女に「見る」ことを当然の権利として望む、脳天気な無職の夫。
彼女の目の手術によって、名誉挽回を期待する落ちぶれた名医。
手術は成功し、モリーの新たな人生が始まったが・・・。

翻訳物を読み慣れている自分にも新鮮なぐらい、”違和感のない”
非常に良くこなれた日本語翻訳の脚本。抑えて冴える演出。
最小限に配置された上質の舞台装置(家具)、照明、音響音楽。
三人の役者達は、全員ベテランの芸達者で抜群の存在感。

独白劇なのに、バランスよく役者三人のテンションが配置されて、
二時間二十分観ていて飽きない。モリーは少女のように初々しく、
フランクは全力のお笑い芸人のノリ、ライス医師は悲観的。

そんな主役三人の人生が交互に語られ、絡みながらも展開しない。
展開しなかったんだ!と、気付くのは幕が下りてから。
ゆえに、カタルシスは感じない。感じさせないように計算されている。
答えは観客へ投げ掛けられた。”自分で考えろ”と。

じれったいぐらい抑えに抑え。観客に語りかけ妄想させる舞台。
ちょっと時間が経ってから、「でも、○○だと思うんだけど・・・」と、
一緒に観た人と語らずにはおれないような。
単純なエンターティメントを期待した人には、拍子抜けかもしれない。

舞台のラストで観客全員が、モリーの暗闇を一緒に体験するのは、
優しくも恐ろしい演出だ。
真っ暗の客席を歩き回る、四方八方から響いてくるようなモリーの声。
母の胎内で胎児が聞くのは、きっとこんな声なのだろう。
南果歩のハスキーがかった独特の声。たまらん。



実は、観た直後に不満に似たものを感じた。この話は知っていると。
・・・で、思い出した。高校の漢文の参考書に載っていたのだ。
ごく簡単に書くと、こんな話だった。漢文では八十字もない短文。

 あるところに、目も鼻も口もないのっぺらぼうの混沌という王がいた。
 彼に恩を感じる二人の王たちが、礼を兼ねて試しに混沌の顔に穴を
 開けてやった。目鼻耳に二つづつ、口に一つ。
 そして七つの穴が開いた時、混沌は死んでしまった。

荘子(紀元前300年頃?)の有名な寓話のテーマを意識的に
なぞったのではないかと疑わせる『モリー・スウィーニー』。

このテーマを現代的に肉付けするとこうなるのか! と驚くと同時に、
古典をなぞるなら、もう一歩踏み出してもよかったんじゃないかと
・・・・・・ひどく、ひどく贅沢な望みを抱かせる。

この環境でしかできない、最良最善を尽くした舞台なのは確かだ。

それでも、エンターティメントを愛する私は。
混沌の優しい闇へ沈んだモリーが、踏み出す奇跡を見たかった。
谷賢一のオリジナル作品で、奇跡に会う日を楽しみにしている。

そこまで書くからには、自分もやれよと厳しく己を叱咤する。
このタイミングで観てよかった。ありがとうモリー。
ありがとう、演劇悪魔。
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category: 感想系

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